2087年に行った話

(タイトルと本文は全てうそです)


大地を蹴り宙に舞った昼下がり。

ケチにボロボロな老女が突然訪ねてきました。

勧誘にしてはおかしいなと思い、聞いてみました。

「キーワードは?」

すると老女は答えました。

「ハートと…イニシャル…」

開けてみると、自分と同じ場所にほくろのある…

「わっはっはっは!若い若い…めんごいめんごい」

何だこの老女。

「鳩に豆鉄砲食らったような顔をして!私は111歳のお前さんだよ」

新手のスタンド使い、または新手の詐欺?

「若い頃の私よ…BUCK-TICKファン歴、何年だ?」

うーん、中二の14歳の頃にはすっかり好きになっていたんだよね…

「1991年から…ファン歴29年…」

老女は、闇の光にニヤリと笑った。

「私は…97年」

岩人間!?

「あの、111歳って本当ですか?え?私?なんで?」

老女は不思議そうに言った。

「まだタイムマシンすらない時代?」

何言ってるのおばあちゃん。

「ドラえもんの世界だけなんすけど」

そういうと、おばあちゃんは半ばあきれ顔で言った。

「こっちの世界、タイムマシンの次のやつ開発されてるよ」

なんだそりゃ!想像したこともなかった。

「おばあちゃんが未来の人ってことで聞いていいですか?

未来の秘密をばらすと殺されるんじゃないんですか?」

「やっちゃえばいいんだよ、やっちゃえば」

なんか色々怖いこのおばあちゃん。

「これが私だとして…私のおしゃべりって未来になっても変わらないのか…」


「この家、懐かしいねぇ」

勝手に入ってきた。

「まだTシャツある?サイン入りの」

ありますあります。

「BUCK-TICKの物、捨てないでね。すごく価値が上がるから」

私のクローゼットに入ってきた。

「レコードね、こっちの世界で1枚400万円するよ」

「ラバーバンド、懐かしいねぇ。あ、まだ光らないんだ」

「櫻井さんの本の夜想は、250万円。次のやつは?並べないの?」

「チケットの半券、5000円。平成時代のは7000円。昭和は57万円」

「40周年のチケットはどこ?あの形、衝撃的だったでしょ」

まだ32年だし…どこまでネタバレするのこのおばあちゃん。

「チケットチケット…あーっっ!こんなことしに来たんじゃない!」

ビックリした。急に大声を出した。

「あんたデビュー100周年のコンサート行きたくない?

私ね、行こうと思っていたんだけど、ひ孫が出産するからお手伝いしに行くの。

名前が違うと入れないし、それなら昔の私を誘えばいいかなって。

だからちょっと来て!ファンクラブ退会させられるかどうかの危機なの!」

それくらいで過去の人間を連れてきちゃっていいのか…?

「大丈夫、私、去年手術になっちゃって、50歳の私を呼んだのよ。

ばれなかったから大丈夫。手術って言っても、ここ。しわ取り手術よ。私元気だから」


そんなこんなで、100周年コンサートに行ってまいりました。


会場は、クロネコヤマト東京スタジアム。

最寄り駅のJR黒猫駅から徒歩2分。

2分のはずが…周りは100歳超のおじいちゃんおばあちゃんが多くて

牛歩みたいな感じで、15分くらいかかりました。

途中、人混みができていて、何だろうと思ったら

違法のブロマイド屋が。

この時代でもまだ商売になっているのか…。

紙媒体は、アナログ感があって、人気があるそうです。


令和ではまだ若干残っている「余れば買うしない人あるよ」の声は

100周年の世界では全くなくなっていました。

転売にすごく厳しくなって、商売にしている人はいなくなったみたい。

だからあんなに必死になっていたんだ、111歳の私…。

111歳で困っていることがそれかよ…。元気だな…。


会場に着きました。

クロネコヤマト東京スタジアム。

うわ、看板出てる!

「BUCK-TICK the 100th Memories…PARADE」

パレードが続いている!


グッズは事前予約がほとんどで、当日受け取りか配送か

選べるようになっている。

ファン層が100歳超だとそうこなくっちゃだよね…。

売っていることは売っているけど、あまり並んでいない。

111歳の私は当然のように事前に配送してもらっていたらしい。

ラバーバンドだけでも欲しいから、並んでみた。

1つ2000円。

お金は持ってきたけど、昔のお金だから大丈夫かな。

平成31年の500円玉を4つ出すと、

「古いお金!」とみんなが見ていた。

私はじろじろ見られながらラバーバンドを受け取った。

光っていた。本当だ、おばあちゃんが言っていた通りだ。

すると、また100歳超の老人がどんどん集まってきた。

スマホが懐かしい、あんなスペックのやつに10万円ぐらいかけていたね、って。


会場の中は、アリーナ席は全部ステージだった。

1階席、2階席の、座る前提の柔らかな座面。

車いす席は当然たくさんあって、

中にはベッド席もあった。

パイプ椅子はなかった。

立ったり座ったりする時に安全なようにって。


いや…ステージ…アリーナ席全部…

広すぎないか?


席に着いたら、隣には70~80代くらいのおじいさんがいました。

そっか、おじいさんにも人気があるんだな。

BUCK-TICKもおじいさんかな。

ヒデだけいいじじいかちゃんと確かめないと。

おじいさんが話しかけてきた。

「あれ?誰?そこ、わしの母さんの席だよ」

母さん?もしや?もしや?このおじいさんは私の息子か!

「あの、譲ってもらって」

「あ、そう」

おじいさんはラバーバンドをつけながら、前を向いた。

そして写真集を開いた。

思わず目に入りそうになり、私は目をそらした。

生で見るのが初めてでありたい。

写真で知りたくない気がした。

息子じいさんと反対側の客席が埋まるのをひたすら見ていた。


定刻18時30分。

車いすでもベッドそのままでも、集まりがいい。

客席の電気が落ちた。

「わぁ」

「キャー」

「あつしー!」

「ゆーた!」

「じいちゃーん!」

「いまいさーん」

「ひでひこさん!!」

「とーるー!!」

拍手と歓声の中、BUCK-TICKが歩いて出てきた。

ドォーン…ガガガッッ ジャーン

「キャー!!!!」

ガッガッガガッ

最初の曲は、ICONOCLASMだった。

今井さん!!!!ギターが!!菩薩の域!

世の中の神様が束になって宿ったようなたたずまい。

ライトじゃなくて後光が半端ない。

目が開けないくらい眩しい。

120歳を超えても尖りに尖ったナイフのようなギター

あっちゃん、声、出てる!

渋みとビブラートが増し増しの声!

ヒデさん!いいじじい!ふさふさの白髪がつんつん立ってる。

迷いのない職人のようなギター。

後ろのゆーたさん、毛が長い。

かなり長くて、腰まである。

シルバーの髪にグレーのメッシュを入れている。

そしてアニイ。

泣いて泣いてコンタクトがずれました。

おでこは50代より広くなったものの、

頭頂の髪は全部立てている。


「5For All of the world babies!」

日本から世界に羽ばたいたんだ。

世界中にBUCK-TICKのファンがいる。

敦司のアドリブ歌詞で100年の重みを感じた。


MC。

(普通に書いたけどMCって昔は珍しかった)


敦司「みんな…来られて…よかったね…僕らも…」

ファン、笑いと歓声で盛り上がりを見せる。

敦司「今年は…何周年だっけ?アニイ…」

アニイ「ひゃ・く!(遠くから)」

敦司「ご?ひゃ?く?」

アニイ「ひゃく!」

敦司「えー…500じゃなくて、まだ100周年だそうです(笑)」

一同、笑い。

敦司「というのは冗談で。百年と一口に言っても、長いことやってます」

敦司「昭和に組んだバンドが…平成…令和…えーっと…笑

ずっと、この通り…同じメンバーでやってます…」

ファンから大きな拍手と歓声。

敦司「生きてるって…素晴らしい…」

ファン、拍手。

敦司「ではアニイ、次、いける?」

敦司「この中で、一番年上だからね…いたわらないと」

敦司「一番若いのは…えっと、誰だっけ」

ゆーたさん、後ろで手を挙げる

敦司「んー・・・誰だっけ…」

ゆーたさん、尻文字で「ゆ」

敦司「ね?ねこ?」

ゆーたさん、尻文字で「う」

敦司「ラ?」

ゆーたさん、尻文字で「た」

敦司「十二?」

敦司「みんな合わせて…なんだっけ」

ファン、笑い。

敦司「ありがとう、ゆーた」

ゆーたさん、腰が痛いというジェスチャー


敦司「じゃあね…次の曲は…ミスター・サウスポー…」

ファンから黄色い歓声。懐かしい!という声も。

知らない曲でしたが、BUCK-TICKの大ヒット曲らしい。

西暦何年ぐらいの曲なんだろう。

隣の息子じいさんが話しかけてきた。

「これ、50年前の曲。デビュー50周年の時の」

今井さん作詞作曲、直球のメロウなラブソング。

今井さんの高い声のコーラスが健在だった。

今井節、いい、すごくいい!

変則ドラムで、アニイは笑顔で叩いていた。


敦司「みなさん…元気ですね…僕らも負けていませんよ…」

敦司「次の曲は…思い出の…メリー…ゴウ、ラウンド…」

うわーっっ!!!ILLUSION!!

小道具の花を持って歌う敦司。

泣いているファンもいっぱいいる。

ここにいるファンのほうが、BUCK-TICKをもっと見てるんだ。

いっぱい思い出があるよね。

ちょっとうらやましくなった。


敦司「100周年ということで…ファン投票やりましてね…

応募してくれました?ほんと?ふふ…ありがとう」

敦司「シングルだけじゃなくて…アルバムからの曲が多くて…

ちゃんとアルバムも聞いてくれている…ありがたいですね」

敦司「では、ファン投票で…一番人気のあった曲…

お聞きください…碧い自画像…」

聞いたことはない、バラード曲だった。

美しい男が、友達の飲み屋に飾る絵を描いたという歌詞。

美しすぎる顔に悩み、自分の顔を青で描いた。

胸を打つ歌、なんとこれは昨年の曲らしい。

(隣の息子じいさん情報)

BUCK-TICKは100周年を迎えても

最新が最高に格好いいと言われているらしい。

当然メンバーも120歳になってからますます格好いいと。

うーん、確かに格好いい。

私の知ってる53歳でも格好いいんだけど。

いや、すべての断面が格好いい。

格好いい断面の集合。

どこ切っても格好いい。

金太郎あめのような確率で全部の瞬間が格好いい。

「その格好良さ、わしは80年見てる」

隣の息子爺め。


敦司「では…ここで…スペシャルゲスト…ISSAY!」

なんと!SixNineの時にあっちゃんと濃厚な絡みを見せてくれた

あのISSAYさんが登場!!

ほとんど変わっていない風貌。

ISSAY「ステージではひさしぶりだね…」

敦司「ね…。今世紀、初…。ありがとうございます…」

ISSAY「22世紀が来る前に呼んでくれてありがとう」

敦司「ふふふ…感無量です…」


「愛しのロックスター」with ISSAY。


♪わた しは 生きてる~


という歌詞が、もはや笑いになっている。

そりゃそうさ…120歳でこれだけの会場を満員にさせて…

ってかメンバーの平均年齢120歳って…。


♪もし僕が星になっても君は笑う


星になる、というのが、悲しい喩えではなく

スターという意味の星だった気がする。超長寿で。


ISSAYさんは

「ちゃんと歌詞覚えていてよかったです」

と言って、大歓声の中、舞台の袖に消えました。


ここで、今井寿テルミンショーが始まる。

テルミンが大量に登場。

と同時にヒデさん、アニイ、ゆーたさんがお色直しに。

あっちゃんがMC。

「100周年なので…100体用意したそうです…うそです」

実際に数えてみると、20体でした。

そして「ごゆっくり!」と言って上手に消えようとして…

じっと見る今井さんに下手を指さされ…

下手に消えるあっちゃん。

会場、どっと笑う。

さまざまな形をしたテルミンの周りで、

踊るように寿が揺れる、ああなんて美しい。

今井寿のアドリブテルミンショー、大成功でした。


そこにアニイ登場。

「じゃ、今度は、わたくしヤガミ・トールの登場です。

BUCK-TICKのドラムスをやらせていただいております。

みなさま、よろしくお願いします」

と固い挨拶をして、ドラムを叩く。

アニイのドラムショー。

トットトトット・トット♪

とおどけて終わる。

ガタガタとわざと震えながら姿を消す。


ゆーたさん登場。

ウッドベースを弾きながら、車に乗って登場。

静かにしていないと生音が聞こえないのでシーンとしている。

ベースが盛り上がってきた時に観客のボルテージも最高潮に。

(この盛り上がり方が三味線のそれのようでした)

天井からはシリアスの形の紙吹雪がたくさん落ちてきた。

ゆーたさんMC。

「黒猫ホール最高!愛してます!」

ゆーたさん退場。


ヒデさん、アコギを持って登場。

「あの。ども。星野です」

ジャラジャラジャラとギターをかき鳴らす。

ステージの縁を歩く。

ファンから悲鳴に似た歓声が。

「キャー!!!」

「ヒデー!!!!」

「その先、崖!!」

「落ちないでー!!!」

「キャー!」

スリリングに、端から端まで縁を歩く。

落ちるような!落ちないような!

ギターを弾きながら縁をあるく!

会場からは安堵のため息と歓声が。

そしてそのまま舞台の袖に消えました。


次に登場したのは、今井寿・再び。

ビーグル犬を連れてきた。

舞台をぐるりと散歩させた時、

そのビーグル犬が脱糞をし、

今井さんの口元が「やっべぇ…またか…」と動く。

スタッフが飛んできて、フンを拾って、退場。

今井さんはスタッフに犬を渡し、ギターを持つ。

ジャラーン…。

すると、櫻井敦司がワシじゃあ!と登場。

今井さんがアドリブでギターをかき鳴らす。

あっちゃんがアドリブで即興曲を歌う。

「幕を…開けて…幕の…向こうには…

100周年を祝ってくれる…君が…

花束を抱えて…僕を…待っているよ…

君は…僕を…知って…いるのか…

僕は…君を…君だけを…オウノウ!ファックミー!」

二度と弾けない即興今井節。

その日の観客に向けて歌う櫻井節。

時代の生き証人となった観客たち。


そしてヒデさんがまた縁を歩きながら出てきてギターを弾く。

ゆーたさんは黒いベースを抱えて弾きながら登場。

アニイはそっとドラムの前に座った。

静寂…


トットッ トットッ トットトッ トット

トットッ トットッ トットトッ トット

チャラララー

トットッ トットッ トットトッ トット

トットッ トットッ トットトッ トット

チャラララー

ドコドン!

「LOVE ME!」

あっちゃんが弾けて会場の客電がすべて点く。

5万本の腕がワイパーになる。


「100年もこんなに応援してくれてありがとう!

ありがとう!ありがとう!

愛してます!

BUCK-TICKはこれからもずっと音楽を作っていきます。

ここまできたら、どこまでできるか…

できるところまで突っ走っていきたいと思います。

今年も神様になります!

みなさんも、幸せに…幸せに…幸せに…

また逢う日まで、健康で…お互い…ねっ」


私は、BUCK-TICKが超高齢者になっても

こんなにも格好良くロックをやっている姿を見て

なんというか…格好良すぎて…

そしてファンも、お体だけは気を付けて

BUCK-TICKを愛している姿が、ロックだと思った。


黒猫駅から自宅へ戻る前に、隣の駅で降りた。

今日は玄孫が生まれたんだ。

私が出産した病院で生んだようだ。

建て替えて、昔の面影はなかったが、

駅から出て大きな通り沿いに坂を下って右に曲がり、

すぐに左に行く道が懐かしかった。

今日生まれたばかりの赤ちゃんは一人だった。

元気でいたら、この赤ちゃんを抱っこできるんだ。

よし、長生きしてBUCK-TICK100周年を見るぞ。













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